泉ヶ丘ラーメン劇場

・創立年月日:2002年10月8日オープン
・ジョイパーク泉ヶ丘一階
・劇場内は江戸時代、道頓堀に建てられた芝居小屋をイメージし、各店を芝居小屋に見立てたお店つくりがされている。

【出店】

山形 天童
東京 支那そば 勝丸
京都 新福菜館
宮崎 風来軒

千葉 マルバ

北海道 むつみ屋

神戸 山神山人

たこやき キムタコ

ソフトクリーム 心(キロロ)

【同社をめぐる産業状況】

各地のテーマパークやレジャー施設の集客が落ち込む中で強力な集客装置として注目されているのが新横浜ラーメン博物館/横濱カレーミュージアム/ラーメンスタジアム/小樽運河食堂などのフードテーマパークである。これは、ラーメンやカレーなど同一業種の専門店を集積することで一種のテーマパークを形成するものである。フードテーマパークは手ごろな料金で食事もレジャー気分も味わえるため、消費者の人気が高い。

【ラーメン劇場のコンセプト】

従来のSCにはしない。明確なセールスポイントのしかけとしてラーメン劇場がある。
江戸時代の劇場を舞台に七人の麺匠が繰り広げるラーメン絵巻。こだわりの味の共演は、麺匠の人生ドラマの写し絵。

【ラーメン劇場設立のきっかけから、開館までの経緯】

SCとの差別化→不況に強いラーメン、日本人の食に対する関心度の高さ、今はだれもが食に遊びを求める時代である。

質疑応答

・関西、特に大阪で麺類といえば、まず‘うどん’が挙げられると思うのですが、なぜラーメンを選ばれたのですか。
A関西では、一番に「うどん」があげられ、すでに「うどん」の食文化が確立されており、今からテーマ化しても消費者へのインパクトが弱く、その反面、ラーメンは関西ではいまだ市場が未成熟でありこれといった集積地がなくまた、ラーメンは全国でも消費需要は高い等の総合判断。ラーメンは味を皆が知っているので、長く続くと思う。
・劇場の背景として、なぜ江戸時代にされたのですか。
A テーマパークの成功条件の要素は、まずノスタルジー(一番に輝いていた時代の再現)イマジネーション(全国の美味い店を一日で食べ歩きできる)であり、当劇場は、食い倒れの町 大阪」の中心である道頓堀の一番輝いていた元禄文化のはなやかし頃の芝居小屋を再現した。

ラーメン劇場の特色は何でしょうか。また、泉ヶ丘ラーメン劇場にしかない魅力を教えてください。

A 各店のいずれ劣らぬ個性派店主の味へのこだわり、生きざまにより演じるラーメンドラマが大きなテーマのひとつです。館内には店主にスポットを当て、来場者がラーメンの味とともに店主のひとなりを知っていただき、より深くラーメンを楽しむ演出をしております。

競合施設として意識されている施設はありますか。あれば、どのような対抗措置をとられていますか。

A 日本全国に四つしかないからフードテーマパーク別の情報交換を計画中である。おそらく小樽が一番豊富だろう。

【立地について

なぜ、立地場所として大阪の中でも堺市を選ばれたのでしょうか。また、他に立地場所として検討された地域があれば教えてください。
A 当SCが堺市にあり、当館リニューアルの関連で企画しましたので、ほかの立地は考えていない。
ラーメン劇場ができたことで、周辺地域への波及効果はありましたか。逆に、効果を受けたことはありましたか。
A ラーメン劇場がオープンし、広範囲からの来場者があり周辺への相乗効果は大きい。また、年々泉ヶ丘駅周辺の集客減の歯止めになりつつある。

【出店について】

・出店するお店が変わることはありますか。
A:まだ始まって間もないので無いが、将来的にはあるかもしれない。お客様の支持がない売上下位の店舗には退店して頂き、その後また新しい店舗を導入してお客さま
に情報を発信する。関西にないものをお客さまに飽きさせないように常に提供していくためには出店店舗の固定化は望ましくない。
・どのような基準で出店する店舗を選定されましたか。

A.「初めて大阪に出店する」というのが最初の基準である。出店希望店のリストはある。劇場側から探す場合もある。(ラーメンフリークの人に厳選してもらって数十店リストアップ)  

・出店してもらいたいお店との交渉の際に、どのようなことが問題になりましたか。

A.店主は職人気質が強いので、ビジネスとして割り切れんでケンカ別れになったことがある。商店街内の個人経営店だと、好きなときに開店・閉店ができるが、ラーメン劇場内ではできない。それが窮屈で、ラーメン劇場から去っていく店も多い。

・出店している店舗では、本店の方が働いていらっしゃいますか。それとも新しく雇われた方に任せていらっしゃるのですか。

A.厨房は店主もしくは本店社員で構成し、店内客周りは現地の採用スタッフ。本店との間に方針の違い等がある。集客率は本店より1.7倍ほど大きい。

出店するお店が変わることはありますか。

A.情報発信の場であるため、お店の入れ替えはある。店の入れ替えは客が味の選別などで決める。常に「関西初」のお店を心がけている。

 

≪その他≫

・どのようなお客さまをターゲットとされていますか。
A:オールエージです。
☆客の流れとしては平日は流動客は0(ゼロ)。土日は多い。
・実際にラーメン劇場へ来場されるお客さまは、どのような年齢層の方が多いですか。また、大阪の方と遠方から来られる方、どちらが多いのでしょうか。

A:1番多いのは18才から20代のグループかカップル、2番目はファミリー、3番目は50代以降のご夫婦。3分の2はやはり大阪から。

・同じラーメンのテーマパーク型のレストランである‘新横浜ラーメン博物館’について、どう思われますか。

A:新横浜ラーメン博物館はあくまで利潤目的であり集金装置として完結する事が目的。博物館という名の通り、展示物がメイン。しかし当劇場はラーメン劇場の収益も

もちろん大事であるが、ショッピングセンターの集客装置として稼動することを1番の目的としている。あくまで集客がメイン。主旨の時点で全く異なる。このラーメン

劇場の集客の波及効果が他のSC内の店舗へ行かなければ意味がない。ラーメン劇場にコストはかけるがそれなりのコストしかかけない。

☆新横浜ラーメン博物館は、博物館一つで集積地としてやっていかなければならないため、コストが非常に大きい。 一方、ラーメン劇場はショッピングセンター内の一つであるため、一応内装は作ったが、それなりのコストで済ませられる。そのため、入場料は不要である。(役割…収益≦集客)

・新横浜ラーメン博物館では、リピーターとして毎日来られる方が結構多くいらっしゃると伺いましたが、泉ヶ丘ラーメン劇場でもリピーターはいらっしゃいますか。

A:オープン3ヶ月目に入り、リピーターの比率は多くなっている。また、各店舗の変わらぬ味がリピーターを作る1番の要因だと思う。全店舗制覇されたお客さまもいる。また、二分の一は新規の客である。

・劇場を運営していくに当たって、どのような人材を求めていらっしゃいますか。

A:「@オーナーの利益を確保し、なおかつ利益をあげること、Aテナントの運営管理、Bお客様に喜んでもらう」、この3点が劇場運営に欠かせない。この3点を実行でき、なおかつ発想の転換ができるクリエイティブな人。一番手の人は次に違う事を考えるが、二番手の人はそれ以上何もやらない。だから思いつき、偶然ではなくデータ等理論に基づいて発案、提案できる、そういった理にかなった自己主張ができる人材を求めている。

・面接で採用を決める際どういった部分を重視されますか。

A:販売促進等専門的なことが出来る人。そして自己アピールできる人。「はい」としか言わない人間は駄目。何をやりたいか言葉に出せる人。

・現在、ラーメン劇場が目指すものは何でしょうか。

A:常に関西市場でラーメン情報の発信地であること、常に新しい味をお客さまに提供し関西でのラーメン食文化の構築を目指す。

【質疑応答の中ででた質問やきづいたこと】

神戸の山神山人が出店しているのはどうしてでしょうか。
A:できれば全店全て初めて大阪に出店するお店を呼びたかったのが本音。しかし各店に掛け合っても全員来てくれることはない。 絶対に何軒かは断られる。
・何か予定している企画はありますか。
A:本店でも食べられない泉ヶ丘だけの冬季限定メニューを今企画している。例えば、「冬場限定ラーメン」「泉ヶ丘限定ラーメン」など。そういった企画を3,4ヵ月単位で行っていく。ラーメンの情報発信がテーマなので誰か有名人を呼んだり、値段を安くしたりする事はしない。他の情報を発信しても意味がない。

☆常に「情報発信」を考えている。

・ラーメン劇場の中にたこ焼き屋があるのはどうしてですか。

A:当初はラーメン屋7店舗だけだったがラーメンだけでは不安になったのでにおいがあるものをいれようと思った。大阪にあるものじゃ面白くないので新しいたこ焼きをやりたいという方がいたのでやってもらった。 キムチ味という、大阪にはない新しい味である。店主は大阪の人。またアイスクリーム屋の「キロロ」は箸休めのため。ラーメンに付随していた物販を求めていたが関東で人気のあるアイスクリームを紹介してもらったので来て貰った。こちらも人気で、目的客:連動客=5:5ほどである。

・オープンにあたって何か宣伝はしましたか

A:劇場オープン後は取材が多かった。関西のテレビ局は全て取材に来た。 USJは不祥事を起こしていたし、大阪で他に話題がなかったからだろう。

予告チラシ…40万部 オープン後…30万部

 南海線中づり、地下鉄ポスター

 FMでの一ヶ月キャンペーン…2週間程

 雑誌など 

これらより、TV効果はもっと大きかった。TVで取り上げられ後すぐ電話での問い合わせが殺到し、客は増えた。

・他地域(海外等)へ進出される予定はありますか。

A:ディベロッパーなので取得する物件のオーナーの人が言わない限り海外は特に考えていない。自分の持っている物件以外行う気はない。ただ国内でラーメン劇場を作ろうという計画はある。モール形式になるかもしれないが千葉のSCでそういった計画が出ている。

・新横浜ではメニューに身にラーメンというのが各店にあって「食べ歩き」が可能であったがここラーメン劇場では全店にミニラーメンがあるわけではなかった。ミニラーメンをやっているのは三店舗だけ

→味のこだわりは店主に優先する。中には、ミニラーメンを作るのが嫌な店主もいる。

ショッピングセンター内でのラーメン劇場の力は?

大きい。オープン前の予想数字をクリアしている。「集客をいかに高めるか」営業に対してはショッピングセンターからの口出しはできない。

・大阪のご当地ラーメンってあるのでしょうか。

A大阪のご当地ラーメンはあることはある。梅田などの、それなりの集客環境が整っているところであれば、成功するかもしれない。しかし、そのような便のいいところから便の悪いところに来てもらうというのは難しい。ラーメン劇場では、関西初の味を心がけているめ、和歌山のラーメン店を入れなかった。

☆関西、関東では商業のやり方に違いを感じるというお話もでた。

→ラーメン店に限らず、東京ではすぐに集積できるが、関西ではそうはいかない。

 関西から関東への進出は多いが、今は難しい。逆に、関東から関西への進出は少ない。

 関東では切磋琢磨していたので、関西でも勝てるようになった。関東では先んじなくては勝てなかった。 大阪では、新しいことに飛び出すことがなかった。関西の方がのんびりしている。関西から東京へ行くのは、「流通」であって「流動」ではない。

 (ただし、百貨店は別である。数が限られており、格をもっているので、 関西・関東の区別はあまりない。)

 今の小売は消費者主導で、小売業がついていけてない。一つの見方だけでは、進歩がない。

【感想】

・泉ヶ丘ラーメン劇場にヒアリングに行きたいと思った理由の一つとして昨年夏にヒアリングに行った新横浜ラーメン博物館との比較をしたいというのがあったのですが、実際にラーメン劇場にヒアリングに行きその大きな違いに驚きを感じました。全国から美味しいラーメン屋を集めたという点でどちらも似ているのですが新横浜ラーメン博物館はあくまで利潤が先にあるのに対し泉ヶ丘ラーメン劇場はまず第一に集客が目的としてあり、根本から全く異なっていました。根本から異なる分、ラーメン博物館のヒアリングの時とは全く異なる角度からの、より実際のビジネスに近いお話お話をお聞きすることができ、就職活動が近づいている私達にとって本当に為になりました。またディベロッパーという職種について全く知識がない私でしたが今回のヒアリングでオーナーの持つ物件(泉ヶ丘の場合、SC)をどのように活用することにより集客を得られるのか具体的な経営戦略を練るディベロッパーの存在の重要性を学ばさせて頂きました。今回のヒアリングは本当に勉強になる事が多い面白いヒアリングでした。
・見学するまでは新横浜とあまり違いがないのではと思っていました。しかし、実際見学し、お話を聞いてそのあまりの違いに驚きました。新横浜では、たとえ店に客が入らなかったとしても最低保証額はもらわないとしていました。が、ラーメン劇場では店の人気がその店の運命を左右するというくらい、より客中心の経営になっていました。ここに根本的な違いを私は感じました。その一方で内装に関しては店の中まではそのコンセプトは行き届いているとは言い難く、またミニラーメンがない店も多くて店の主張を感じました。だから内装に関してはいまひとつぱっとしないという感じでしたが、ラーメンはもちろんのこと、アイス、たこやきなどこだわりのおいしさがあり、SCの中の一つの集客要素としては十分魅力的な施設だと思いました。価格競争が激しくなっていく中で、こういった施設での差別化をはかる競争はこれからどうなっていくのかについて考えさせられました。
・ 昨年夏に見学した、新横浜ラーメン博物館の仕掛けの凝り様が大変印象的であり、大阪にも新しくフードテーマパークがオープンしたということで、見学前から非常に関心があった。しかし、一口にフードテーマパークと言っても、両者は全く違うコンセプトに基づいて運営されていることに衝撃を受けた。ラーメン劇場は、SCの集客装置の一つとして位置付けられている。確かに、見学させていただいた日は平日であったにもかかわらず、人気店には長時間に渡る長蛇の列が出来ていた。SCに組み込まれているためか、老若男女問わず、幅広い客層を確認できた。一方、人気のない店には客は寄りつかず、対照的だった。こうして、劇場内で店の入替りにつながるのだろうと思った。厳しい競争を通じて、支持される店舗だけが残るのは大変歓迎すべきことだと思うし、ほとんどの市場が飽和状態になっている現在は、こうした競争に勝ち残ることで本当によいものを提供していくしかないと思う。


 

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